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心理学から学ぶ 「ブランディングデザインの法則」
2023.02.25
ブランディングデザインの法則「カリギュラ効果」
心理学から学ぶ 「ブランディングデザインの法則」
なぜか入りたくなるお店やつい見てしまうポスター、思わず買いたくなる商品など。
心理学から学ぶ「ブランディングデザインの話」を掲載しています。
皆さんこんにちは。ブランディングデザイン会社「株式会社SUPERBALL」です。
まだまだ寒い日が続きますが、街にはちらほらと梅の花が咲き始め、春がもうすぐそこまで来ているのを伝えてくれています。春になるとお花見など、楽しい食事の風景をイメージしてしまいますね。
先日、5日間のファスティングをしたのですが、「食べてはならない。」という制約があればあるほど食事のことばかりつい考えてしまいました。
「カリギュラ効果」を知っていますか?
このように「食べてはいけないほど食べたい」「見てはいけない物を見たい」「触ってはいけない物を触りたい」ある行動を禁止されることで、かえってやってみたくなってしまう心理現象が「カリギュラ効果」です。
浦島太郎が玉手箱を開けてしまったのも、鶴が布を織っている姿をおじいさんがのぞいてしまったのも、すべて禁止されたがために強い興味を生んでしまったのが原因です。今回は、カリギュラ効果の意味や由来から、カリギュラ効果の心理効果、カリギュラ効果を使った成功例や失敗例をご紹介します。
カリギュラ効果を日常やビジネスで活用できるヒントが見つかるかもしれません。
暴君として知られる『ローマ皇帝カリグラ』をモデルにした1980年のイタリア・アメリカの合作映画『カリギュラ』に由来するようです。同作があまりにも過激な内容のため、アメリカではボストンなどの一部地域で公開禁止になり、かえって世間の話題を惹いたことにちなむそうです。
ただし、海外では用いられておらず、おおむね日本特有の用語なようです。この映画の経緯から、禁止されたことに反動して起こる心理効果を、「カリギュラ効果」と呼ぶようになったのです。
なぜ、心理的に効果があるの?
人はある事柄を他者から「禁止」や「限定」されると、その事柄に対するフラストレーションが増幅する傾向にあります。
そして、その増幅したフラストレーションを満たそうとする心理が働き、禁止されていることを実行してしまうのです。
マーケティングへの活用例は?
このカリギュラ効果を使ったマーケティング戦略が積極的に取り入れられており、その活用法は業種を問わずさまざまなところで普及しています。ここからは、カリギュラ効果をうまく利用している例をご紹介します。
① 〇〇限定など「制限」をかける
会員限定などで「制限」をかけることも、カリギュラ効果が関係しています。
例えば、有料記事やオンラインサロンなど「会員でないと読めない記事」やかつての大塚家具のように「会員でないと買えない商品」など、制限をかけると「読めない」「買えない」というストレスを感じます。ユーザーによっては、制限を解除するために会員登録するモチベーションになるのです。「完全予約制」や「一見さんお断り」といった制限においても、ユーザーへ、一種のステータスを与えることができ、付加価値の増加につながります。
しかし会員が有料だったり登録が煩雑だったりすると、興味を失い離脱するユーザーも出てきます。制限をかけすぎると、本来なら興味を持ってファンになってくれたかもしれないユーザーを失うことにもなりかねないので制限の内容には注意が必要です。
② 時間的な「制限」をかける
時間的な制限も、カリギュラ効果と関係します。テレビなどで頻繁に用いられる「続きはCMの後で」といったクイズ番組などでよく見られる手法です。答えの直前まで明らかにして、視聴者の知りたいという欲求が最高潮に達したところでCMに繋げます。流し見していた番組だとしても気になってチャンネルを変えにくくなるものです。これは「ここまで見たのだから、答えを知らないと損をしてしまう」という意識も働いていると考えられます。
ただ、こうした「続きはCMの後で」について、慶応義塾大の榊博文教授(社会心理学)が調査したところ、86%の人が「不愉快」に思っていることが明らかになりました。また、84%が「番組に好感が持てない」、34%の人が「CMの商品は買いたくない」と答えていることから、番組的にもCMを出稿している企業的にも逆効果であることが分かったそうです。
③「禁止」を盛り込む
マーケティングにおけるカリギュラ効果の代表的な例として「禁止」を盛り込んだキャッチコピーがあります。
例えば「決して一人では観ないでください」とか「本当は公開したくないノウハウ」「検索してはいけないキーワード」「閲覧注意」などと書くことで、逆に興味をそそらせるのです。
「雑誌の袋とじ」や「福袋」も中身を見られないという「禁止」がついつい気になって買ってしまうというマーケティングのテクニックです。
単に「買ってください」とお願いするよりも「数量限定なので、必要な方以外は買わないでください」というように、あえて強くアピールせず、制限をつくることでユーザーの購買意欲を高める効果が期待できます。
私たちのカフェで販売している「おやき」も、オープン時『お一人様4個まで』と限定販売しておりました。これは、カリギュラ効果を狙ったものではなく、単に人手が足りず生産が追いつかなかったからなのですが、この効果が働いてか完売が続いておりました。(ちなみに、現在は個数制限なしです)
「カリギュラ効果」の注意点
注意点としては、禁止や制限を解く方法が複雑すぎたり、有料(高額)であると、かえってユーザーの購買意欲は下がってしまいます。
例えば、「入店するには10名以上からの紹介状と1週間前からの予約が必要です」とすると、制限が高すぎるため、逆にユーザーの入店意欲は下がってしまいます。
この場合は「入店するには紹介状が必要です」と、少し努力すれば誰でも手が届きそうなところまで、ハードルを下げる方がよいでしょう。
また、「購入禁止」や「入店禁止」など、コピーの表現が強すぎるとかえってイメージを下げてしまい逆効果となってしまうため、カリギュラ効果を活用する際は、制限のハードルや表現方法などに注意が必要です。
また、禁止や制限はユーザーにとってストレスを与えますので、急いでいたり、真剣に欲しいと考えている人に対して「買わないでください」などのコピーは「それなら買わない」と思われてしまう可能性もあります。
「カリギュラ効果」を効果的に利用してみましょう
禁止されればされるほど、かえってやりたくなる「カリギュラ効果」。人の天邪鬼な心理を利用したマーケティング手法なのですが、あくまでもユーザーとの良好な関係性が前提にあり、興味を持たせる為の導入テクニックで、アフターフォローが重要です。