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心理学から学ぶ 「ブランディングデザインの法則」
2023.04.27
ブランディングデザインの法則「イケア効果」
心理学から学ぶ 「ブランディングデザインの法則」
なぜか入りたくなるお店やつい見てしまうポスター、思わず買いたくなる商品など。
心理学から学ぶ「ブランディングデザインの話」を掲載しています。
皆さんこんにちは。ブランディングデザイン会社「株式会社SUPERBALL」です。もうすぐGWですが皆様ご予定はお決まりでしょうか?
気温も暖かくなり新緑の気持ちの良い季節になってまいりました。こんな季節には好きな音楽をかけてオープンカーで海沿いをドライブでもすれば最高ですね。プレイリストは海に合う曲にしようか、ノリノリの曲で行こうか、懐メロも良いですね。このプレイリストを選曲する作業、音楽好きの方なら考えるだけでワクワクするのではないでしょうか。好みの楽曲を選び、選曲順を考えたりと、凝れば凝るほどそのプレイリストに愛着が生まれていくこともあるかと思います。今回のテーマはこのプレイリストのような『自分が労力や手間をかけた物事に対して、愛着や所有感が高まる現象』をご紹介したいと思います。
この現象は『イケア効果』と呼ばれいます。そうですあの大型家具店の『IKEA』の事です。皆様はイケアで買い物をされたことがありますか?
イケアの家具の特徴は、ほとんどが自分で組み立てなければならない仕様になっています。自分で組み立てる手間をかけることで、その家具に対する愛着や所有感が高まり、それを高く評価するようになります。自分の直感や経験によってものごとを判断してしまう認知バイアスの一種であるとされています。
イケア効果が生まれる理由として考えられるのは、まず自己説明効果が働くことが挙げられます。自己説明効果とは、自分で何かを説明することで、その対象に対する理解が深まるという心理現象のことを指します。
また労力貢献(=自分で何かに労力を費やすことで、その対象に対する価値が高まるという心理現象)や自己決定のか感覚(=自分自身が何かを決めたり、コントロールしたりすることで、その対象に対する満足度が高まるという心理現象)等の心理的特性が重なり合うことで、生まれるのではないかと言われています。
自分で作った!
この効果を生かした製品はイケア効果と呼ばれる以前からありました。昔アメリカで販売されていたホットケーキミックスは、粉に水を混ぜて焼くだけという商品で、出来るだけ簡単にホットケーキを作れるということが売りだったのですが、あまり売れ行きがよくありませんでした。そこで水だけでなく牛乳と卵も加えてつくる、少し手間を増やした商品へと変更したこところ、売り上げが伸び、広く親しまれる商品へとなったそうです。これは、少しの手間を増やしたことで、「自分が作った」という感覚を持つことができ、他の商品と比べて価値があると思うようになったからではないでしょうか。
その他にもいろんなところでイケア効果がみられます。
以下にいくつか事例を挙げてみます。
1.キットや手作りセット
レゴブロックや模型、手芸キットなど自分で組み立てたり作ったりすることで、その対象についての理解が深まり、愛着や所有感が生まれます。
2.DIY(Do It Yourself)
家具のリメイクやDIY工作、料理や菓子作りなど自分で作る体験も、イケア効果が生じる可能性があります。自分で作ることで、その対象についての理解が深まり、所有感や愛着が生まれます。
3.経験や旅行
自分で旅程を組み立てることや、現地での移動手段や宿泊先を自分で手配することもイケア効果と共通する部分があります。
4.自己説明
自己説明によってもイケア効果が生じることがあります。たとえば、学習や仕事において、自分で何かを説明したりまとめたりすることで、その対象に対する理解が深まるという点で、イケア効果と共通する部分があります。
このように、イケア効果は私たちの日常に様々な形で現れる心理効果であり、デザインに限らず、多くの場面で活用することができます。
子供たちの「イケア効果」
弊社が携わった施設でも「イケア効果」が活かされています。
東京都足立区にある『ギャラクシティ』という子供向けの文化施設があり、VI・サインデザイン・ワークショップ企画、運営を担当させていただきました。その施設のコンセプトである「こどもがつくる施設」に基づき、フォント、シンボルマークやサイン計画等、グラフィックに必要な要素のすべてが子供の手によって生み出されました。
ワークショップ形式で子供たちと一緒にオリジナルフォントを作成し、それを館内の案内表示等で使用しています。実際に手を動かして作成した文字、マークがこれから利用する施設で実際に見ることができるという体験を通して、施設への愛着を持ってもらえたのではないかと思っています。
いかがでしたでしょうか?自分が手間をかけて関わったものには、愛着を持ち、価値のあるものだと考える「イケア効果」のご紹介でした。
日々仕事をしていくうえで、時間をかけずに効率的に物事を進めていくのが、最善のような感覚を持ってしまいがちですが、より価値を高め、満足感を得るためには効率の追求だけではなく、あえて隙間を残し一手間加えてもらう工夫も必要なのではないでしょうか。