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心理学から学ぶ 「ブランディングデザインの法則」
2023.01.26
ブランディングデザインの法則 「ナッジ理論」
心理学から学ぶ 「ブランディングデザインの法則」
なぜか入りたくなるお店やつい見てしまうポスター、思わず買いたくなる商品など。
心理学から学ぶ「ブランディングデザインの話」を掲載しています。
皆さんこんにちは。ブランディングデザイン会社「株式会社SUPERBALL」です。
年が明けてから早一ヶ月がたちました、寒い日々が続いておりますが皆様いかがお過ごしでしょうか。寒いと異常にトイレが近くなりがちな江口です。
トイレといえば男性の皆様なら一度は見たことがあるかと思いますが、公衆男性用トイレの小便器についている、的のようなマークご存知でしょうか。このマークがあるとそこを狙って用を足そうとする意識が働くので、結果尿の飛び散りを防止する効果になる。というものです。有名な話なのでご存知な方も多いかと思いますが、元々はオランダの空港で一匹のハエの絵を便器に書いたのが始まりなようです。そこから派生して今や至る所の便器で見ることができます。
これは「人は的があると、そこに狙いを定める」という分析結果に基づいて、尿が飛び散るのを防ぎ綺麗にトイレを利用させたもので、ナッジ理論といいます。
今回はこのナッジ理論についてのおはなしです。ナッジ理論とはノーベル経済賞を受賞した行動経済学者リチャード・セイラー教授が提唱した考えで『人々が強制的にではなく、よりよい選択を自発的に取れるようにする方法』を生み出すための理論のことです。「ナッジ(nudge)』とは直訳すると「ヒジでちょんと突く」という意味です。
選択の自由を残しつつ、(ヒジでちょんと突くような)ちょっとした後押しをすることで、より良い選択を気分良く選べるように促します。
ナッジは人々の行動をよりよいものに誘導することが目的なので、私利私欲のために用いることは認めていません。そのためナッジを用いるうえでは「倫理観」が不可欠とされています。
ナッジ理論を実践する上で、様々なフレームワークが提唱されているのですが、今回はその中から『Social(社会性):みんな同じことをしているという社会規範を示し、人々の行動を誘導する』を利用して、実際に問題を解決した事例をご紹介したいと思います。
熊本地域医療センターでは、看護師の超過勤務が多く、離職率も高いことが問題となっていました。超過勤務の要因の一つに、引継ぎ可能な業務を、勤務終了時刻が過ぎてからも引き受けてしまっている現状がありました。本来残業は指示されて行うものなのですが、実際には明確な指示がなくても、暗黙の了解として行われているのが現状でした。そこで「看護師ユニフォーム2色制」を導入し、日勤のユニフォームをピンク、夜勤のユニフォームを緑にして日勤と夜勤の勤務者の区別を明確にしました。これにより、医師が指示を出す看護師が明確になり、職員のタイムマネジメント・働き方に関する意識改革が進み、残業時間が激減し離職率も低下したそうです。これは残業していると自分だけユニフォームの色がピンクになり、他のみんなは緑のユニフォームになる。緑が普通だという社会規範が生まれ、そこから社会的圧力を感じてしまうという心理を利用しています。
いかがでしたでしょうか。今回はナッジ理論のお話でした。ナッジ理論は日常の様々な場面で活用され広く浸透しているので、デザインに携わっていると無自覚的にナッジ理論を用いていることもあるのかなと思いました。使い方によっては同調圧力や心理コストをかけすぎることにもなるので、発信する側にたつときにはそのあたりも配慮して、うまく利用していければ良いなと感じました。