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心理学から学ぶ 「ブランディングデザインの法則」
2025.02.20
最初の情報がすべてを決める「アンカリング効果」
心理学から学ぶ 「ブランディングデザインの法則」
なぜか入りたくなるお店やつい見てしまうポスター、思わず買いたくなる商品など。
心理学から学ぶ「ブランディングデザインの話」を掲載しています。
皆さんこんにちは。ブランディングデザイン会社「株式会社SUPERBALL」です。
すっかり冬の寒さが続き、春の訪れが待ち遠しく感じる季節になりました。街を歩けば、まだまだコートが手放せませんが、ふとした瞬間に感じる日差しの暖かさに、少しずつ季節の変化を感じることもありますね。
さて、皆さんはショッピング中に「お得!」と感じて思わず購入した経験はありませんか? 例えば、定価10,000円の商品が「50%オフ!今なら5,000円!」と表示されていると、つい手が伸びてしまうこともあるでしょう。でも、その5,000円という価格、本当にお得なのでしょうか?
今回は、そんな価格の見せ方が消費者の判断に与える影響、「アンカリング効果」についてお話しします。
「アンカリング効果」とは?
「アンカリング効果(Anchoring Effect)」とは、最初に提示された数字や情報(アンカー)が、その後の判断に大きな影響を与える心理的なバイアスのことを指します。
この概念は、心理学者ダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーによって提唱されました。彼らの研究によると、人は意思決定を行う際、最初に提示された情報を基準(アンカー)として捉え、それに引っ張られる傾向があるといいます。
例えば、あるワインが2,000円で売られていたとします。その横に「通常価格:5,000円 → 特別価格:2,000円!」と書かれていると、実際の価格が2,000円でも「お得に感じる」ことが多いでしょう。これは、最初に提示された5,000円がアンカーとして機能し、2,000円が「割安」に見えるからです。
このように、人間の判断は意外と「理性」よりも「最初に見た情報」に大きく左右されているのです。
日常に潜むアンカリング効果
アンカリング効果は、私たちの生活のあらゆる場面で見られます。
1. ショッピングでの「割引表示」
「50%オフ!」や「通常価格10,000円→今だけ5,000円!」といった表示は典型的なアンカリング効果の例です。最初の「通常価格」がアンカーとなり、割引後の価格が相対的に魅力的に感じられます。
2. レストランのメニュー
高級レストランでは、最も高額なメニューを最初に載せることがあります。例えば、10,000円のコース料理を一番上に掲載し、その後に5,000円のコースを載せると、5,000円が「お得」に見えるのです。
3. 家電量販店での「高額商品」
最新の高額モデルを最初に見せた後で、少しスペックを落とした廉価版を提示すると、「この価格でこの性能ならお得」と感じることがあります。例えば、30万円の最新ノートPCを見た後、15万円のモデルを見ると「安い」と思ってしまうのです
4. 給与交渉や価格交渉
転職活動で給与交渉をする際に、最初に高めの希望年収を提示すると、企業側のオファーもそれに引っ張られやすくなると言われています。これは商談や値段交渉の場面でも活用されています。
ブランディングデザインにおけるアンカリング効果の活用法
ブランディングデザインにおいても、アンカリング効果は非常に強力なツールです。
適切に活用することで、商品やサービスの価値をより魅力的に見せることができます。
1. 価格の見せ方を工夫する
単に「5,000円」と提示するのではなく、「通常10,000円 → 今だけ5,000円!」と表示するだけで、消費者の感じ方は大きく変わります。また、「月額5,000円」ではなく「1日あたり166円」といった見せ方も、価格のハードルを下げるのに有効です。
2. プレミアム商品を上手に配置する
オンラインストアや実店舗では、最も高額な商品を最初に提示し、その後に標準モデルや廉価版を見せると、消費者は「お得感」を感じやすくなります。この戦略はAppleや高級ブランドでもよく用いられています。
3. サブスクリプションプランの設計
よくあるのが、「プレミアムプラン(10,000円)・スタンダードプラン(5,000円)・ベーシックプラン(3,000円)」という3段階の価格設定。この場合、最も高額なプランを見た後にスタンダードプランを見ると、「手頃な価格なのに内容が充実している」と感じやすくなります。
4. 「先着◯名限定」の表記
「通常価格5,000円 → 先着50名限定3,000円!」といった表示をすると、最初の5,000円がアンカーとなり、3,000円がより魅力的に見えるだけでなく、限定感も加わり購買意欲が高まります。
いかがでしたか?今回は「アンカリング効果」についてお話ししました。
アンカリング効果は、私たちの意思決定に大きな影響を与える心理現象であり、ブランディングデザインにおいても非常に有効な手法です。適切に活用することで、ブランドの価値をより魅力的に伝え、消費者の印象をコントロールしやすくなります。
しかし、この効果を利用する際には、消費者の信頼を損なわないよう注意が必要です。特に、誇張された比較や不誠実な価格設定は逆効果になりかねません。あくまで誠実なコミュニケーションを前提とし、ブランドの本質的な価値を伝える手段として活用することが重要です。
デザインと心理学は密接に結びついており、消費者の心理を理解することで、より効果的なブランディングが可能になります。ぜひ、日々のデザインの中でアンカリング効果を意識し、ブランドの魅力を最大限に引き出す工夫をしてみてください。