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心理学から学ぶ 「ブランディングデザインの法則」
2023.06.08
ブランディングデザインの法則「無意識バイアスとインクルーシブデザイン」
心理学から学ぶ 「ブランディングデザインの法則」
なぜか入りたくなるお店やつい見てしまうポスター、思わず買いたくなる商品など。
心理学から学ぶ「ブランディングデザインの話」を掲載しています。
皆さんこんにちは。ブランディングデザイン会社「株式会社SUPERBALL」です。
6月に入り、吹く風も次第に夏めいてまいりましたが、6月と言えば、皆さんは何を思い浮かべますか?
紫陽花、父の日、梅雨が続く憂鬱な日々・・・様々なものをイメージすると思います。
今回はそんな「◯◯と言えば、◇◇」といった思考、「無意識バイアス」について取り上げてみたいと思います。
アンコンシャス・バイアス(無意識バイアス)とは?
アンコンシャス・バイアス(無意識バイアス)とは、自分自身は気づいていない「ものの見方やとらえ方の歪みや偏り」をいいます。
アンコンシャス・バイアスは、その人の過去の経験や知識、価値観、信念をベースに認知や判断を自動的に行い、何気ない発言や行動として現れます。
自分自身では意識しづらく、ゆがみや偏りがあるとは認識していないため、「無意識の偏見」とも呼ばれます。
血液型で相手の性格を想像してしまう・・なんてことはありませんか?
脳は瞬時に物事を無意識に紐づけて素早く理解しようとします。アンコンシャス・バイアスは高速思考ともいえます。大量の情報を処理し、すばやく行動するためには欠かせないものです。アンコンシャス・バイアスが機能することで大枠で物事を理解したり判断することが可能となります。
アンコンシャス・バイアスは誰もが持っているもので、良い悪いというものではありません。一方で、その情報や知識が偏っていたり思い込みによるものであっても、自動的に瞬時に処理するため修正することができません。自分を含めて、誰もがアンコンシャス・バイアスを持っていることに自覚的になり、それをきちんと取り扱うことが大切です。
アンコンシャス・バイアスに意識的になり、対策を行うと大きな変化が生まれます。
女性の採用率が5%から46%に! アメリカ オーケストラの採用試験
アメリカの5大オーケストラでは、1970年代まで女性奏者比率は5%未満でした。
1970年代後半からブラインド審査を導入し、応募者と審査員の間にスクリーンを置き誰が演奏しているか見えない状態で審査を行うようにしました。性別や年齢、国籍などを排除して審査方法を行った結果、女性の採用比率が倍増しました。
現在では、一流オーケストラ奏者の4割は女性となっています。
このような「無意識の偏見」を取り除く取り組みの一つとして、インクルーシブデザインが挙げられます。
インクルーシブデザインとは?
インクルーシブデザインとは、ロンドンにある国立の美術大学「ロイヤル・カレッジ・オブ・アート」名誉教授である、ロジャー・コールマン氏によって1990年代前半に提唱された、あらゆる人間の背景や能力における多様性を理解し、共に課題を解決するデザイン手法です。
多くの製品・サービスデザインにおいて、ターゲットユーザーとして考慮されず排除されてしまう人々が、少なからず存在します。
排除される側面としては、身体の障がい、年齢の他に、性別・ジェンダー、言語、国籍、文化、能力、環境などさまざまなものがあります。
インクルーシブデザインは、そのような「排除されてきた人々」をデザインプロセス初期から積極的に巻き込んだ、インクルーシブ(包括的)なデザインを意味します。
インクルーシブデザインの商品・施設事例
インクルーシブデザインを取り入れ、消費者から大きな反響を呼んでいる商品や施設をご紹介します。
NIKE 「ゴー フライイーズ」
NIKE初のハンズフリーシューズ「ゴー フライイーズ」は、手を使わなくても着脱しやすいよう、足を入れやすいオープンな形状を維持しながら、足を入れるとロックされ、かかとのスタンドを踏めば解除される仕組みになっています。
手が不自由な人や、しゃがむのが難しいお年寄り、お腹の大きな妊婦さんをはじめ、脱ぎ履きに時間がかからない便利さが広く受け入れられています。
山形市南部児童遊戯施設 「シェルターインクルーシブプレイス コパル」
車いす、二人乗り、多人数用のブランコや、音や手触りで楽しめる遊具、光や音、香りなどの演出によって感覚刺激を楽しめるリラクゼーション空間「スヌーズレン」などを設置しています。
障害や、個人的な特徴によって従来の公園の遊具を使うのが難しい子どもも楽しく遊ぶことができ、年齢や環境の異なる子どもや保護者が交流する場として親しまれています。
インクルーシブ(包括的)であることの必要性
ビジネスや公共サービス提供の分野でも、これまでメインのターゲットから排除されてきた人たちの視点を、インクルーシブ(包括的)に考えることは必要不可欠となっています。
従来のサービスに不便さや疎外感を感じていた人たちの困りごとは、当事者以外の人には見えづらい面がありました。これからの社会では、「見えにくい=存在しない」という扱いではなく、当事者の抱える問題点を共有した上で、共に解決していくという考えが広まっていくと予想されます。
高齢化やグローバル化、ダイバーシティーの流れが依然として急速に続く中、インクルーシブデザインは商品開発・販売やマーケティング活動を進める面でも重要な役割を担うことになるでしょう。
「常識」、「当たり前」とは?
いかがでしたか?今回は、いつでもどこでも誰にでも存在する「偏見」や「排除」を意識することから始まる考えとデザイン手法をご紹介しました。
このような取り組みにとって大切なことは、「知る」、「気づく」、「対処する」といった3つのステップになります。
アンコンシャス・バイアスを「知り」、自分の言動を顧みて「気づく」ことで、インクルーシブデザインなどの「対処する」取り組みができるようになります。
皆さんも今一度、「常識」や「当たり前」について見直してみませんか?