web magazine
心理学から学ぶ 「ブランディングデザインの法則」
2023.07.05
ブランディングデザインの法則「カクテルパーティー効果」
心理学から学ぶ 「ブランディングデザインの法則」
なぜか入りたくなるお店やつい見てしまうポスター、思わず買いたくなる商品など。
心理学から学ぶ「ブランディングデザインの話」を掲載しています。
皆さんこんにちは。ブランディングデザイン会社「株式会社SUPERBALL」です。
7月に入り、だんだんと日が長くなってきましたね。 日が長くなると外出の時間が伸び、散策しているうちに街でいろいろなものを目にするようになると思います。
みなさんは、街でさまざまな看板、ポスター、広告などを目にする際ついつい知っている単語に引き寄せられて文字を追ってしまった…なんていう経験をしたことがあるのではないでしょうか。
今回はそんな「たくさん情報がある中でついつい知っている情報に意識が向いてしまう」効果、「カクテルパーティー効果」についてご紹介したいと思います。
「カクテルパーティー効果」とは?
カクテルパーティー効果は音声の選択的聴取のことで、1953年に心理学者のコリン・チェリーによって提唱されました。
人混みや雑踏の中でも、自分に関係のあることや自分の興味があるキーワードは自然に聞きとることができる現象を指し、人が多いパーティ会場(カクテルパーティー)でも、自分の名前を呼ぶ声や、友人との会話を聞き分けられることから、カクテルパーティー効果と呼ばれるようになったと言われています。
このカクテルパーティー効果は、多様な情報が飛び交う環境において、自身の最も重要な情報のみを選択肢、注意を向ける「選択的注意」と呼ばれる認知機能の代表例でもあります。
つまり、冒頭でお話しした「街でつい知っている情報に意識が向いてしまう」という経験は、カクテルパーティー効果の持つ「選択的注意」から促されているというわけです。
このように「カクテルパーティー効果」は私たちの日常に多く関わりを持つ心理効果になります。
ここからは、「カクテルパーティー効果」が実際にどのような関わりを持っているのかご紹介したいと思います。
「〇〇が気になるそこのアナタ!」
近年、動画サイトやSNSのショート動画の中に数秒の短い広告を見ることが多くなりました。
そのような短い広告の中でも多いのが冒頭に特定のジャンルのフレーズを使った広告です。
「健康が気になるそこのアナタ!」
「〇〇市にお住まいの方に朗報です!」
「30代転職するなら」
このようなインパクトのあるワンフレーズの中に、自分に該当するものがあるとついドキっとしてしまいますよね。
このような広告は「カクテルパーティー効果」を用いた広告の代表例です。
カクテルパーティー効果を利用してキャッチコピーを制作することで、振り向いてもらえる印象的な広告を制作することができます。
何かを宣伝する際、「歳末セール」や「50%OFF」というような不特定多数を指すワードの広告では、様々な情報があふれる現代の中ではなかなか振り向いてもらえません。カクテルパーティー効果を利用することはどのようなメッセージを伝えたいかを意識することになり、振り向いてもらえるような広告を制作することができます。
カクテルパーティー効果を利用してインパクトのあるキャッチコピーを制作する際意識するポイントが3つあります。
1. ターゲットの関心 (ダイエット・健康意識・子育て・スポーツ…)
2. ターゲットの属性 (会社員・主婦・学生・ひとり暮らし…)
3. ターゲットの地質的属性 (東京23区在住・九州出身・日本在住…)
このように3つの要素からキーワードを盛り込むことで、メッセージ性のあるキャッチコピーを制作することができます。
企業の実例
機能性表示食品「からだおだやか茶W」より
ルックJTB「女子旅特集 女子におすすめの海外ツアー 東京発」より
上記は実際の広告例です。
このように私たちの身近なところにカクテルパーティー効果を感じられる場面はたくさんあります。
旅行先でも…
初めて訪れた大型ショッピングモールや、旅行先のアウトレットモールや市街地でついつい地元のショッピングモールにも入っているようなチェーン店に立ち寄ってしまった経験はないでしょうか。
初めて見るショップのロゴがひしめき合う状況において、親しみのあるチェーン店のロゴは通常の買い物時よりも一層目立つ感覚になります。
このような際もカクテルパーティー効果における「選択的注意」が働くためだと考えられます。
例えば、大手アパレルチェーンの「UNIQLO」はシンプルかつ洗練されたブランドのロゴデザインと、パッと目を引く印象的なカラーリングから目を引くロゴデザインとなっています。
また、TVを付ければ番組の合間のCMとして広告とロゴが流れ、電車内の広告や看板にも多くのロゴデザインを目にします。
このように私たちの生活の中に頻繁に登場するとともに国内外に多くの店舗を出店していることから、初めて訪れた市街地のビルの中や大型ショッピングモールなどで普段以上に存在感を放ち、ついつい目に止まってわざわざ旅行先で近所にもあるチェーン店に立ち寄ってしまうという現象が起こるのですね。
江戸のごちそう。両国へ
弊社の携わったブランディングの実例にもカクテルパーティー効果が活かされているものがあります。
「粋な江戸の食文化を楽しむ。」をコンセプトに両国駅の旧駅舎に集合した12店の和食施設「-両国- 江戸NOREN」のロゴ、サイン、ポスター、パンフレット、外観デザインなど一連のビジュアルデザインを担当させていただきました。
「江戸」という漢字をベースに「お箸と器」をモチーフに構成したロゴ、江戸時代の暖簾にもっとも多く使われた「藍色」のサイン、「江戸の賑わいを伝える街並み」をキービジュアルにポスター、リーフレットを展開しました。
また、「江戸のごちそう。両国へ」というキャッチコピーはターゲットの関心となる「ごちそう」、地質的属性「両国」というワードを含みカクテルパーティー効果を利用し、メッセージ性を意識したキャッチフレーズとなっています。
いかがでしたか?
このように「カクテルパーティー効果」について実例を見ていくと、デザインやブランディングにも深く関わっており、多様な場面で活用できることがわかります。
デザインやブランディングを行う上でたくさんの人に届いて欲しい!という気持ちが走りがちですが、今一度誰に届けたいのかを意識し伝え方を工夫することも大切なのではないでしょうか。