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心理学から学ぶ 「ブランディングデザインの法則」
2023.02.09
ブランディングデザインの法則「パレイドリア現象」
心理学から学ぶ 「ブランディングデザインの法則」
なぜか入りたくなるお店やつい見てしまうポスター、思わず買いたくなる商品など。
心理学から学ぶ「ブランディングデザインの話」を掲載しています。
皆さんこんにちは。ブランディングデザイン会社「株式会社SUPERBALL」です。
まだまだ寒い日が続きますが、空が晴れてお天気だと外に出て散歩をしたくなるものです。散歩をしていると雲がハートの形にみえたり、マンホールのデザインが顔に見えたり…と楽しい発見がありますよね。
このような本来はその形を意図していないものでも、何かに当てはめてしまう現象のことを「パレイドリア現象(パレイドリア効果)」と言うそうです。視覚や聴覚の刺激を受けて、私たち人間は自分の知っている何かに当てはめて思い浮かべるという本能が働くそうです。
パレイドリア(Pareidolia)とは、ギリシャ語のパラ(παρά:para)とエイドロン(εἴδωλον:eidolon)が語源となっています。パラは接頭語として「~の側に、~に似る、疑似の」という意味があり、エイドロンは「幻影、形、理想像」という意味があります。
視覚・聴覚の刺激と人間心理に関係の深いパレイドリア現象について知ることは、よりターゲットに伝わるデザインのヒントを得られそうです。
月にウサギが住んでいるように見える
月の模様は世界各国で様々なものに見立てられています。
日本ではウサギの餅つきに見立てられていますよね。ですが、中国ではウサギが薬草を挽く姿に見立てられているそうです。また、南ヨーロッパではウサギではなくカニに見立てられています。私たちがウサギの耳として見ている部分をカニのハサミに当てはめてみると、ハサミを上に掲げたカニの姿が浮かび上がります。他にも女性の横顔に見えるという国もあれば、ロバに見えるという国もあります。
このように中国の見え方は中医学の歴史を感じますし、南ヨーロッパの見え方は地中海沿岸の土地柄が現れているように感じます。その土地の習慣や馴染みのあるもの、つまり自分たちの知っている何かに当てはめてしまうことが月の模様を通してよく分かります。
ディズニーランドでは隠れミッキーを見つけるという楽しみ方があります。パーク内にある建物の装飾や壁画、木目の模様が随所でミッキーの形に見えるように作られていて、その仕掛けは思いもよらぬところにあったりと遊び心がつまっています。もちろんこちらは意図して作られているものではありますが、一見、木目に見える模様から私たちはミッキーを見つけることができます。これはミッキーの形を私たちがすでに知っているからこそ成り立つ、パレイドリア現象なのではないでしょうか。
ロールシャッハ・テストもパレイドリア現象を使った心理テストになります。これはスイスの精神科医、ヘルマン・ロールシャッハによって考案された有名な性格検査です。
紙に落としたインクのしみでできた左右対称の図形から何をイメージするか、被験者に述べてもらうことで性格検査を行います。この被験者に述べてもらった言語表現から思考や感情を分析して測るそうです。
インクのしみの形は偶然にできた意図しない形であるため当然正解はありません。ここで浮かび出てくるイメージは被験者の中にある記憶や認知によるものだからこそ、深層心理を探ることができそうですよね。
外国語が日本語に聞こえる
空耳もパレイドリア現象によるものです。外国語が日本語に聞こえたりしたことはありませんか。私も経験があります。
海外旅行先のお店でたまたま流れていた歌が現地の言葉で歌われているのか、何と言っているかが分からず、終始自分の名前を何度も呼ばれているようにしか聞こえませんでした。いまだにあの歌は何と言っていたのか分からず、ずっと気になっています。ですが、残念ながらもう知る手立てがありません…!
テレビ番組やCMでは空耳や聞き間違いを活かしたコンテンツも多くあり、面白いですよね。あるあるとして共感が得られやすいのかもしれません。このような聴覚のパレイドリア現象を活かしたコンテンツは動画やサウンドデザインにも役立ちそうです。
ただの3つの点が顔に見える
こちらの記号「∵」のように、ただの3つの点が目と口のバランスで配置されていると顔に見えてしまいませんか。これもパレイドリア現象の一種です。とりわけ「顔パレイドリア」や「シミュラクラ現象」とも言われています。シミュラクラ現象は、simulacrumという単語から来ているそうで「像、幻影、偽物」の意味があります。ですが、こちらは日本でのみ使われている名称とのことで、英語としては一般的にパレイドリアという名称が使われているようです。
心霊写真はほとんどこの現象によって、幽霊の顔が映り込んでしまったように感じてしまうようです。3つの点が意図せずとも顔の配置になることはよく起こりそうですが、一度幽霊の顔のように見えてしまったら、もうそれにしか見えず何か怖い意味があるように思えてしまいます。しかも壁の凹凸などでできた影など、有機的なもので構成されると顔が崩れているように見え、怖い印象を受けやすいですよね。
このように幽霊のような顔が見えると怖いですが、他によく挙げられる例として車やコンセントなどがあります。車は車種のデザインによってかっこいい、かわいいなど様々な表情があったりと、無機質なものでもそこには感情があるかのように思えてしまいます。こちらは心霊写真とは打って変わってほっこりしませんか。
病院のような医療施設などの緊張感のあるところだと特にこの顔を活かすことができるのではないかと考えます。
体調が悪くなり、病院で診察を受ける際にはとても不安な心持ちになります。その上、お医者さんに言われるがままに診察台に横になり、何をされるのか分からない医療機器に囲まれてしまえば怯えてしまいますよね。ですが、その機器に顔が見えた瞬間、ほんの少し緊張が和らぎそうではありませんか。
顔は印象に残る?
パレイドリア現象の中でも3つの点が顔に見えてしまうという現象は、顔パレイドリアやシミュラクラ現象という特別に別名があるように、他の形に比べて見つけやすいように思えます。つまり人間は無意識のうちに顔に注目してしまうのではないでしょうか。
SNSなどの広告バナーではモデルを使って作ったバナー画像の方がクリック率が高くなったという検証結果も出ているそうです。また防犯として街なかに貼られている、にらみ目ポスターも実際に効果があるそうです。私もこのポスターを見かけると、何も悪いことをしていなくても見張られているような感覚になり少々気が引き締まります。これもひとまず顔として目に入りやすいからではないでしょうか。
動物やキャラクターの顔を模したパンやスイーツも人気がありますよね。キャラクターパンがパン売り場に並んでいると他のパンに比べて目に付きやすく、ついつい手に取ってみたくなります。そこには何も感情がないはずなのに、まるで「買って~!」と語りかけられているように錯覚します。
少しずれてしまいましたが、パレイドリア現象はこのように人間の経験や記憶などと結びつきが強いです。それは人々の琴線触れられるようなデザインへのヒントになるのではないでしょうか。
このことを活かしたデザインとして、顔を取り入れてみたり、またはターゲットにとって馴染みのあるものに寄せたりすれば、注目を受けやすく印象に残りやすいのではないかと考えます。好感の持てる表情や親しみのあるものに近づけられればイメージアップへのブランディングにも活用ができそうです。ぜひ、パレイドリア現象を意識してデザインに取り入れてみませんか。