対談インタビュー
BRAND TALK
Vol.1 ブリルニクスジャパン株式会社
2022.08.26
半導体メーカーの挑戦。
「日本の革新的テクノロジー」を再び世界へ。
2020年秋以降、半導体の不足は世界的な課題となっている。社会の電子化が一段と進むことで半導体の需要が膨らむ一方、コロナ禍やウクライナ危機などの影響を受け、半導体の生産能力・流通能力が落ちてしまったためだ。1980年代には日本の半導体メーカーは、世界で最も高いシェアを誇っていた。しかし、高性能化に後れをとり、今や米国・韓国・台湾などのメーカーが世界の上位に名を連ねている。日本メーカーがどこまで巻き返せるかが注目を集めている状況のなか、日本・台湾を起点に、世界クラスのCMOSイメージセンサ製品の設計から製造まで一貫した開発を行う企業が「ブリルニクス」だ。2014年に設立し、世界的企業を目指すべく2015年よりリブランディングがスタートした。どのような経緯でリブランディングに取り組んだのだろうか。設立からこれまでの思いをブリルニクスCTO兼ブリルニクスジャパン株式会社代表取締役の高柳功氏にうかがった。
「日本の革新的テクノロジー」を再び世界へ。
―― 今日はよろしくお願いします。高柳さんはどのような経緯でリブランディングに取り組まれたのですか?
高柳氏:ブリルニクスは、2014年に4人の技術者を中心にスタートした企業です。日本で研究開発を行い台湾の工場で生産を行うため、日台同時に登記をしました。立ち上げ当初は、「設計のプラットフォームの作り込みに注力したい」という思いがあり、Webサイトの制作などは行っていませんでした。そんな中で、2015年に営業を行ったり採用活動をしたりするため、対外的なブランディングの重要性が増したのです。
野内:当初ご相談いただいた内容は、「コーポレートロゴのリニューアルとWebサイト制作」の2つでしたね。
高柳氏:そうですね。ロゴをリニューアルしWebサイトを制作することで、ブリルニクスが社会的に信頼できる会社である点と、技術やポートフォリオだけではなく「高品質なイメージセンサの開発・成功を通して社会貢献していく」という所を伝えていきたいと考えました。
野内:最初にお会いした時に、以前使われていたロゴを見せていただきました。
高柳氏:そうなんです。設立当初に制作した既存のロゴがあったのですが、海外に向けたグローバルな展開をするうえで、ブランディング全体を見直す必要性を感じ、知人からSUPERBALLさんをご紹介いただきました。当初は、ロゴやWebサイトだけをお願いするつもりでしたが、統一したブランドイメージをつくるため、名刺やプレゼンテーション資料のテンプレート等全てのデザインをSUPERBALLさんにお願いすることにしたのです。
「世界クラスのチームづくり」を体現
―― どのような流れでリブランディングを進められたのですか?
野内:ブリルニクス様は、「世界クラスのチームづくり」というキーワードを掲げていました。そこでブランディングの見直しを行い、「日本国内よりも海外に視点を向けたデザイン」にポイントを絞りました。また、ブリルニクス様の主力製品であるイメージセンサは、デジタルカメラやドライブレコーダーなどの内部で使われています。イメージセンサという「製品の中にあり、日頃は人目に触れることがあまりない製品の特徴やイメージをどのように伝えていくか?」という点にも心を配りました。
ジョーンズ:ヒアリングを重ね、「聡明・天才集団」や「誠実さ・真面目さ」というブリルニクス様の持ち味を大切に、それらをどう視覚的に伝えていくかを考えながら、信頼性・スマートさ・未来感のある表現に落とし込むことを意識しました。コーポレートロゴは、Webサイト制作と並行で企画を実施し、ご相談をいただいてから1ヶ月位で初回のご提案を致しました。台湾でも使われるコーポレートロゴだったので、提案資料は日本語だけではなく英語版も制作し、プレゼンテーションも両方で行いました。
高柳氏:3つのロゴデザインをご提案いただき、役員と投資家による投票でデザインを決めました。日本と台湾ではビジネススタイルが異なります。制作のヒアリングを通して自社のことを振り返る中で、原点に立ち返り会社のポリシーを確認できる良い機会になったと思っています。
イメージセンサの「光」をモチーフとしたコーポレートロゴ
―― どのようなイメージでコーポレートロゴをつくられたのですか?
野内:ブリルニクスという企業名は、「Brilliant+Photoelectronics」の造語から成っています。そのため、新しいコーポレートロゴには、左側にイニシャルの「B」からイメージしたシンボルマークを配置しています。イメージセンサは光の強さを感知することから、シンボルマークのカラーは、RGBの色が重なると明るくなる「加法混色」をモチーフにしています。重なりの部分はイメージセンサの原理である「電子の眼」を表し、高性能な「眼」と製品の性能の高さを重ねています。「BRILLNICS」のロゴタイプは、文字の太さを変えることで造語の意味を伝えながら、読みやすさにも配慮しました。
小林氏:弊社では、当初から「ロゴの商標登録」を考えていたんです。SUPERBALLさんは、商標登録に関する知見をお持ちでしたので、アドバイスをいただき、台湾でも商標権を取得することができました。それと、ロゴのガイドラインを制作してくださったので、運用をスムーズに進められたのも良かったですね。
―― 社内でのロゴデザインの評判はどうですか?
小林氏:国内の社員だけではなく、台湾のスタッフにも好評です。3Dプリンターを使って、ロゴが入ったコースターを作って愛用している社員もいるんですよ。(笑)採用パンフレットにも使用していますが、スタイリッシュでカッコイイとエンジニアにも評判が良いですね。
統一した企業イメージをつくるブランディングの重要性
―― コーポレートロゴ 、Webサイト以外には、どのようなブランディングツールをつくられたのですか?
ジョーンズ:コーポレートロゴのイメージを基に、名刺・封筒・就活生に向けたパンフレットなどをデザインさせていただきました。名刺や封筒に使用しているグラデーションのボーダーは、ロゴのカラーイメージから展開しています。当初はデザイン要素として考えていなかったのですが、名刺デザインを考える中でヒアリング時にお聞きした「楽しさ・高揚感」というキーワードから、グラデーションをイメージしました。グラデーションカラーは「若葉」のイメージがあり、「企業の成長」という意味も込めています。
高柳氏:このグラデーションカラーは名刺や封筒だけではなく、採用パンフレットや、プレゼンテーション資料などにも使用されています。今ではこの色を見ると、「ブリルニクス」って感じがしますね。
野内:ロゴ・Webサイト・広告・映像・空間など、ブランディングに必要なアイテムをその都度、それぞれの分野のデザイナーに依頼する企業様も多くいらっしゃいます。けれども、ロゴやイメージを単純にコピー&ペーストするだけでは、どうしてもイメージがちぐはぐになり、永く信頼されるブランドイメージを構築するのは難しいと思います。様々な媒体に展開されてもも統一したブランドを持ち続けるためには、「コンセプトからデザイン、制作までを一貫して行う」ことも重要なポイントです。
高柳氏:そうですね。一貫してお願いして良かったと思います。
野内:ブランディングを進めることで、企業や製品の価値が高まり他社との差別化ができるので、顧客の中にブランドイメージを自発的につくり出してもらうことにも繋がります。それと、「この企業で働きたい」と思う人も増えるので、優秀な人材やパートナー企業が集まりやすくなるメリットもあると思います。
小林氏:確かに就活生に向けたパンフレットは、表紙の大きなロゴを使っているのですが、社員が率先して「ロゴを活用したい」と。ロゴがカッコイイという自負があるんですね。
野内:それは、うれしいお話しですね。
統一した企業イメージを構築するためにはブランディングが重要
―― 様々なブランディングツールのデザインを決めていくのは、どのように進められたのですか?
高柳氏:ロゴをリニューアルしたことで、改めて「ロゴは自分たちの象徴である」と思いました。デザインだけではなく素材の選定も、全て信頼しお任せするスタイルで進めていきました。
野内:エントランスのロゴのシンボルマークは、曲面を活かした立体になっています。こうした加工は、通常よりもコストがかるんです。ブリルニクス様は緻密なものづくりをなさっているからかと思いますが、このような細部に対するこだわりをご理解していただけるのは本当にありがたいことだと思っています。ほんの少しのこだわりの積み重ねで、ブランドが創られていくのだと思います。
なんとなく流れている「らしさ」
小林氏:弊社はデザイン関係で何かあったら、SUPERBALLさんにご相談する様に心掛けています。(笑)ロゴの作成だけではなく、イベント出展時の企業ブースから10周年の記念品まで、様々なデザインのご依頼をさせていただきました。
野内:いつもお声がけいただきありがとうございます。
高柳氏:そう言えば、広島で行われたイメージセンサ学会10周年記念の記念品・名札デザインは、国内だけではなく海外の方にも好評でした。
ジョーンズ:世界各国から参加なさるということで、日本の情緒を感じることができる国産の杉で製作された木製のうちわを記念品に、ネームカードには広島にちなんだモミジのグラフィックをご提案させていただきました。
高柳氏:このうちわにも、ブリルニクスらしさを感じるんです。なんとなく流れている所作とか性格とかに「らしさ」があるなと。
野内:デザインとしてのうちわは、名刺やパンフレットとは、見え方は違いますがコンセプトは同じです。ブランディングを構築することで、どんな媒体であっても根幹にブレない軸を持つことができ統一感が出せるのです。その場その場のニーズで途切れてつくるというよりは、きちんと流れを持ってつくるというのが大切ですね。
―― 最後に、今後の目標やビジョンを教えてください。
高柳氏:ブリルニクスは、「現事業分野のトップレベルを目指していきたい」と思っています。 強みを活かしプライドを持って仕事に取り組むことで、「この技術はブリルニクスだね」と言われるようになりたいです。デジタルカメラやスマートフォンなど、複数の分野で強みを出していけるように邁進していきたいと思います。
野内:SUPERBALLは、これからもブランディングデザインを通して、クライアントの様々な課題をデザインの側面から丁寧にサポートしていき、世界を1%でも面白くしていきたいと思います。 また、昨年本社のある東京・小金井市におやきとハーブ茶のカフェ「OYAKI CAFE キイロ」をOPENしました。天然酵母でつくったおやきとハーブ茶を提供しながら誰でもふらりと立ち寄れる場づくりと多様な働き方を応援していきたいと考えています。